目次
はじめに
「おじいちゃん(おばあちゃん)をとにかくリハビリさせてください!」
元のお身体の状態に戻ってほしいと強く願うご家族様からよく聞かれる一言です。
ですが、「とにかくリハビリ」では不十分なお願いです。
今回は特別編として、リハビリについてのお話です。
介護保険でも、リハビリという言葉を耳にします。これは病院で行うリハビリと、何か違いがあるのでしょうか?
またデイサービスでも、機能訓練という言葉が聞かれますが、機能訓練とリハビリは違いがあるのでしょうか?
リハビリを行う際のポイントはあるのでしょうか?
今回のお話しでは、以下のことが分かります。
リハビリを効果的に行うために
- 家での生活動線や動き方などを把握しましょう。そして、今できないことと照らし合わせて、何の訓練が必要なのかを確認してから始めましょう。
リハビリを長続きさせるために
- ご自宅で生活していくうえで必要な動きは何かを確認し、目標をもって訓練してもらうようにしましょう。
リハビリの種類は
- 体の動きを取り戻す訓練と、今の体の状態でどのように生活していくかの訓練があります。また言葉のリハビリもあります。
病院でも施設でもリハビリがしたい場合は
- 医療保険と介護保険のどちらかでしかリハビリはできないので注意が必要です。
もっと訓練がしたい人は
- 介護保険には先生の指示やリハビリ職を介さない機能訓練というものがあります。
もう少し詳しく知りたい方は、このままサニーとコロンの話をどうぞ!
リハビリに必要なこと
「とにかくリハビリさせて…」を例えると
それってね、例えるなら、食べ物屋さんに行って、「ご注文は何ですか」って聞かれた時に、
「私の好きな食べ物を作って持ってきて」って
言ってるのとほぼ同じだよ。
サニーならどうする?
その人が何が好きかわかんないから、作るほうも困っちゃうよ…
それでも作ってって言われたら?
そこまで言われるのなら、例えば…
ご飯やみそ汁とおかずみたいな定食ものとか、
カレーとか、
焼きそばとか、
うどんとか、
そばとか、
まあ多くの人が美味しいだろうなって思って食べるものとかを作るかなあ…
そうなっちゃうよね…。
それでたまたま、その作ったものが、たまたまその人が食べたいなって思っているものと合っていれば、
「ここのシェフさんはよく分かってるから今度からここに通おう」っていう風になるよね。
リピーターが一人増えるのは嬉しいことだけど、素直に喜んでいいかどうかはちょっとわからないね。
その人の好みが分かるまでは、きっとこの次も当たり障りのないもので凌いでくると思うよ。
今の話がそのままリハビリにも当てはます。
「とにかくリハビリ」というのは、全然具体的ではないのです。
でも今の食べ物の話ならよくわかるけれど、リハビリの場合は、どのように話すことが具体的なものになるの?
具体的に伝えるには
例えばご高齢の方が、脳卒中になって、手や足に麻痺が出てしまったような場合、
「また前のように動くようになってほしい」
というのが希望だと思いますが…
それは確かに動かなくなったものが、また動くようになってほしいというのは普通に考えるよね。
でも、ご高齢の方が、
- 普段どれぐらい手や足を使っていたのか
- どれぐらい使えることが望みなのか
なんてご本人に聞いたってわからないことです。つまり「前と同じように」と仮に言われたとして、その「前」がどれくらいなのかわからないものなのです。
そう考えると具体的に伝えるって難しいものだね。
どうすればいいんだろうね…
そこで大事になってくるのが、いつもお家ではどのような生活をしていたのかっていうことなんだ。
どのような生活って言うと?
例えば以下のような内容です。
- どのようなお家に住んでいて
- どのようなお部屋に寝ていて
- どのように起きていて
- どのような生活動線で
- どのような場所でご飯を食べていて
- 日中はどのように過ごしていて
- どのようにトイレに使っていて
- お風呂にはどのように入っていて
などが挙げられます。
そういうのを把握すると何がわかるの?
普段その人の動き方が分かるんだよ。
動き方の癖とか動き方の傾向とか。
そのようなものがわかると何がいいの?
今の麻痺が出てしまっている状況を確認して、これまでの家での動きを照らし合わせて、どのようなことが不便になるか、というのを確認することができます。
そして、これまでの動きに近づいていけるように、訓練をしていくことが可能になります。
つまりリハビリができることになります。
ヘルパーさんのときや住宅改修の話の時にも出てきた話の内容と同じだね。
でもこれまでと違うのは、まずは体の機能が、どれぐらい戻るのかというのを訓練していくものなので、
ここで、どれくらい頑張れるかが、次の段階のヘルパーさんや、住宅改修の分量を決定していくことにも繋がるんだ。
そうとわかれば、すぐにでも訓練して体の動きを取り戻したいよね。
そうしたい気持ちは本当によく分かるんだけれど、そこで大切になるのが基礎になるんだよ。
リハビリの訓練とは
リハビリは華やかな訓練ではありません
( ゚ᴥ゚)ハッ! きそ?何の基礎?今回はリハビリの話だから体の基礎??
例えば
- 関節がどれぐらい動くかとか
- 筋力がどれぐらい残っているかとか
- どれぐらいに起きていられるかとか
関節の動きが狭い時には、関節が通常通り動くような訓練をします。
筋力が少なければ、筋力強化のための訓練をします。
つまりストレッチや筋トレみたいなものもします。
そういったものが、好きな人もいるだろうけれど、
「リハビリ」って言えば、もうちょっと何かリハビリならではの訓練をして、動きを取り戻していくようなイメージだったのになあ…
多くのご高齢の方が同じように「リハビリならではの何か特殊な訓練」があると誤解して、実際の地味な訓練を行っていくなかで「これなら自分ひとりでもできる」と思ってやめてしまう人は多いです。
やめてしまう人は、その後も自分で動こうとはしないし、その時の体の機能から、さらに良くなることが難しくなってしまいます。
でも、その地味な訓練を続けていくことは難しいと思うよ。
どうすれば高いモチベーションで続けることができるの?
そこで必要になってくるのは、ゴールを設定するということなんだ。
ゴールねぇ…どういうこと?
自分のゴールを設定しましょう
例えば、半身に麻痺が出てしまい、歩くことができないご高齢の方がいたとします。
ご自宅に帰るにあたり、必要なことのひとつに、トイレに行くことがあります。
居間のいつも座っているところから、トイレまで片道5 m あったとします。
もし歩くことにフォーカスをするなら、5 m の往復つまり「10 m 歩くことができる」ことが目標となります。
((φ(・д・。)ホォホォ ふむふむ。
またトイレの動作も分割して、
- 立ち上がる
- 向きを変える
- ゆっくり座る
- 安定して座っていられる
- お尻をふく
- ズボンの上げ下ろす
これらの動作でできないところを訓練していきます。
φ(・ω・`)ナルホド こういうふうに考えていくと、トイレに行くこと一つをとっても、様々な動作と体の動きが必要になるんだね。
これまで当たり前にできていたのに、病気になってしまい、できなくなった体の動きを、もう一度取り戻すというのは、文字通りの「リハビリテーション」の意味だね。
でもおじいちゃんおばあちゃんの意欲の他に、体の状態によっては、元気な時のような動きを、完全に取り戻すことは難しいんじゃないの?
そんなときはどうするの?
その時には、ほかのリハビリの専門の人の出番になるんだよ。
リハビリ職の住み分け
リハビリ職というのは理学療法士と作業療法士に分かれるんだよ。
ざっくりと言ってしまえば、体の動きや能力をできる限り回復させるのが、理学療法士の仕事。
現状の体の動きで、どうやって生活動作を作っていくのかが、作業療法士の仕事になるかな。
つまり、理学療法で身体の動きや能力を取り戻せるだけ取り戻したら、(完全には戻らないとしても)その動きを使ってお家で生活できるようにするのが作業療法なんだね。
つまり、ご自宅でどのように暮らしたいのか、という目標の設定が大事になります。
「今まで通り」となどとざっくりと言うのではなく、生活動作を一つ一つ見ていき、そして現在の体の状態を把握して、
- 今の身体はどこまで良くなるのか
- 良くなった時にできることとできないことは何なのか
- できないことをできるようにするためには工夫が必要なのか
- 誰かの手助けが必要なのか
完全に戻るのがベストですが、そうでない場合も多いので、その中で望む暮らしをするためにリハビリは必要になるのです。
そうだったんだね。
- ただマッサージをしてもらって
- 何か機械のトレーニングをやって
- 電気をかけてもらう
それだけをリハビリと思ってる人も多いと思うけれど、意外と奥が深かったんだね。
まあリハビリのメニューとして、今サニーが言ったことが必要な人もいるけれども、
ただ漠然とサニーの言ったことをやって、リハビリをやった気になって、体がちっとも良くならないって言う、おじいちゃんおばあちゃんがいるのも事実だけどね。
リハビリのゴールを設定することで、ひとつひとつの訓練に、意味を持って取り組めるというのは、大きなモチベーションになるね。
でもね、病院はあくまでも治療の場であるから、病気が良くなってしまえば、すぐに退院を勧められてしまんだよ。
リハビリが途中であっても強制終了してしまうところが残念だね。
その後もリハビリが必要な時には介護保険のリハビリのサービスを使うことになるだろうね。
病院のリハビリと介護保険のリハビリは違うの?
病院で行うリハビリと介護保険で行うリハビリは何か違いはあるの?
特にないよ。ただ入院中は、失った体の機能を取り戻す理学療法の方が、メインで行われるイメージかな。
介護保険で行うリハビリは、もうすでに在宅にいるわけだから、作業療法を行うようなイメージかな。
今の自分の体の動きで、どのようにおうちでの生活をしていくのかを考えるのだから、確かに作業療法のイメージだね。
これまで説明してきた在宅サービスは、身体の動きで、どうしてもできなかった動きを補うためのサービスだったよね。
確かにそうだったね。そう考えると、リハビリの役割というのはとても大きいし、大切なものだね。
リハビリと機能訓練
例えば病院に通ってリハビリを行ってから家に帰って介護保険でリハビリのサービスを受けることはできるの?
多くのご高齢の方やご家族様は、できると思っているおりますが、残念ながらできません。
どうして?保険が違うからできるような気もするけれどね。
病院と介護保険のどちらか一方でしかリハビリができない理由
基本的にご高齢の方には「主治医の先生」がつくことになります。主治医の先生については、以下のブログを参照してください。
その先生が、リハビリの「指示せん(処方せんのようなもの)」を書いて、始めてリハビリができるようになります。
指示せんはひとつのリハビリ事業所だけが限定されるので、2箇所でリハビリを行うというのが、そもそもできません。
他の先生から書いてもらえばいいんじゃないの?
基本的に「主治医の先生」は一人と決められているので、そのことを黙って他の病院に行けば、書いてもらうことは可能でしょう。
しかし、病院のレセプト請求の時には、見つかってしまう可能性は大変高いです。
それでは高い意欲を持ってリハビリをやりたい人は、どうすればいいの?
機能訓練をざっくりと言えば
介護保険において、リハビリではありませんが、機能訓練というのがあります。
機能訓練は、先生の指示やリハビリ職がいなくても、メニューを組んで運動することが可能です。
その運動メニューは、リハビリ職の人が作って、介護職員がご高齢の方と行うものや、運動器具を整えて、介護職員がプログラムを考えて運動するものなどがあります。
一般の方がジムに通うようなイメージかな?
そう思ってもらってもいいね。
言葉のリハビリ
そういえば言葉のリハビリもなかった?
あるよ。言語聴覚士さんが行うリハビリね。
言葉のリハビリがあるなら、多くの人がまたお話ができるようになって安心だね。
ところがね、言葉のリハビリはものすごく地味で大変なんだよ。
どう大変なの?
言葉のリハビリの難しさ
発声練習、口の周りの筋トレなど、訓練メニューはあまり多くありません。
そのうえ、うまく発声できない自分の声を聞き取り、そしてもっとしゃべりたいのに、しゃべることのできないもどかしさを感じながら、訓練を続けるのは簡単なことではありません。
もちろん続ければ、少しずつ良くなっていきますが、その認識がご本人にもご家族様にもなく、効果がないと感じてしまい、途中で諦めてしまう人もいます。
そういう人はどうなっちゃうの?喋れないままなの?
コミュニケーションは相手があって成り立つため、片方の人が喋ることができないと分かれば、もう一方の人は自然と Yes No の質問に切り替えて話をするようになります。
つまり、しゃべることのできない人の方は、首を振るだけでコミュニケーションが成り立つことになります。
そうなると、お話する力を取り戻さなくても、なんとかなると思ってしまい、結局喋れないままということになります。
その喋れないままでなんとかなるものなの?
周りの人が、その人に対してずっと Yes No で語り続けてくれれば、コミュニケーションとしては、なんとか成り立つだろうけれど、
お話をする力というのは、食べる力とも関係が深いので、食べたり飲み込んだりという能力にも影響が出るかもしれないね。
要するに食べにくくなったり飲みにくくなったりっていうことだね。そうなるとますます大変だね。
言葉のリハビリのゴールは、極端に言えば「話ができるようになる」という設定だけになります。
つまり、モチベーションをあげるのが難しいのです。
そのうえ、コミュニケーションの相手側が、
- 聞き取りにくいことに対して不快感をあらわにする
- Yes No の質問に切り替えられてしまう
このようなことをすると、その時点で話すことに自信をなくし、しゃべる力がつかなくなってしまうため、本人だけではなく、周囲の協力も必要となります。
話すことと食べることは直結してるようだし、当たり前にできていたことを取り戻すことの大変さが本当によくわかったよ。
今日のまとめ
リハビリを効果的に行うために
- 家での生活動線や動き方などを把握しましょう。そして、今できないことと照らし合わせて、何の訓練が必要なのかを確認してから始めましょう。
リハビリを長続きさせるために
- ご自宅で生活していくうえで必要な動きは何かを確認し、目標をもって訓練してもらうようにしましょう。
リハビリの種類は
- 体の動きを取り戻す訓練と、今の体の状態でどのように生活していくかの訓練があります。また言葉のリハビリもあります。
病院でも施設でもリハビリがしたい場合は
- 医療保険と介護保険のどちらかでしかリハビリはできないので注意が必要です。
もっと訓練がしたい人は
- 介護保険には先生の指示やリハビリ職を介さない機能訓練というものがあります。
いかがでしたでしょうか?
リハビリの難しさや、続けていくためのコツの一助となれば幸いです。
皆さんのココロが晴れやかになりますように。
リハビリってさ、いわゆるリハビリの専門職の人にお願いしてれば大丈夫な事なんじゃないの?