目次
はじめに~急な介護向けリフォームの話に慌てないために~
「おじいちゃん(おばあちゃん)が退院するけれど、実家は何もしなくても大丈夫なのかな…」
「病院(施設)ではリハビリの先生に手すりなどが必要って言われたけど、何をどこにつければいいのだろうか?」
「介護向けにリフォームするって、あの狭い廊下をどうやって車いすが通れるようにするのだろう…」
急な病気で入院し、退院後は家の改修が急に必要という話は、介護保険業界では珍しくありません。
ここでおススメできないことは、建築業者にすべてお願いすることです(特に男性のご家族にこの傾向があります)。
このブログをお読みいただくことで、建築業者主導の、高額で、不必要な部分も含まれるリフォームではなく、ご家族様から本当に必要な部分だけのリフォームを提案できるようになります。
住宅改修とはどういうものか
- 介護保険の認定を受けた人が自宅で安全に暮らすための改修工事を最大20万円分(税込み)を1割負担で受けることができます。
介護向けリフォームは車椅子向けのリフォーム…?
- 住宅改修=車いすの生活向けリフォームのことではありません。ご高齢の方の生活に合わせてできない動きを補うための工事となります。
住宅改修を建築業者さんに任せきりするのは…
- 建築業者の中には介護保険の住宅改修のことを分かっていない人もいるので注意。
住宅改修のポイント
- ご高齢の方のできない動きを補うための必要な部分だけを工事にしましょう。
なんでもかんでも住宅改修すればいいものではない?
- ある程度のバリアは必要な場合があります。
介護向けリフォームの前に~住宅改修のきほん~
介護保険サービス「住宅改修」とは…
ご高齢の方が、要介護認定(要支援1~要介護5)の認定をもらった後に、これからもご自宅でより安全に生活が送れるように、ご自宅を改修するするための費用を最大20万円支給するものです。
工事の種類は以下の通り
(1)手すりの取付け
(2)段差の解消
(3)滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更
(4)引き戸等への扉の取替え
(5)洋式便器等への便器の取替え
(6)その他前各号の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修
住宅改修は原則「1回限り」ですが、お引っ越しされた場合や、介護度が著しく重くなってしまった場合は、再度支給を受けることができます。
参考資料:厚生労働省「住宅改修概要資料」
介護保険サービス「住宅改修」で使えるお金
介護保険サービス「住宅改修」では、上記の工事費用を最大20万円支給されます。
ここから、負担割合に応じたお支払いになるので、以下の通りのお支払いになります。
1割負担の場合→2万円
2割負担の場合→4万円
3割負担の場合→6万円
残念ながら、消費税込みで20万円だよ。
【ワンポイント!】
税抜きで20万の場合、税込みで22万になります。この場合のお支払い(1割負担で想定)は…
・20万円を超えた分の2万円はそのまま10割で自己負担のお支払い
・20万円分は介護保険でまかなえるので、20万円のうちの1割負担の2万円のお支払い
合計 4万円のお支払いになります
負担割合? 何のこと? と思った方は以下のブログを参考にしてください。
ちなみに、「介護認定を受けてみよう」の回や「介護保険のお金の話」で出てきた、「負担割合証」に記載されている割合のことになります。
だから、負担割合証に「2割」と記載されていたら、2割負担だし、「3割」なら3割負担に住宅改修もなるんだよ。
ところで、工事は1回で税込み20万円を使い切らないとだめなの?
一度に全部20万円分使ってもいいけど、例えば、今回の工事の総額は5万円で、残りの税込み15万円分はまた必要な時に使っても大丈夫だよ。
そんな細かいこと、いちいち覚えていられないよ…
ちゃんと行政がどれくらい使っているか1円単位で把握しているから大丈夫だよ。
【重要】「住宅改修」は建築業者なら誰でもできるの?
ところで、工事を請け負う業者さんは誰でもいいの?
建築業者は自由に選べます。
ですが、行政(市区町村)に届出を出している建築業者と出していない建築業者では、「お支払いの方法」が変わってきます。
お支払い方法の違い
行政に届け出を出している建築業者は「受領委任払い」ができます。
受領委任払いとは、例えば税込みで総額20万円の住宅改修の工事の場合、改修工事終了後、ご高齢の方(1割負担)は施工業者に、2万円のみをお支払います。
施工業者は、施工完了後、行政に申請することで、残りの18万円を行政からもらうことができます。
行政に届け出を出していない業者を選ぶ場合は「償還払い(しょうかんばらい)」になります。
償還払いとは、例えば税込みで総額20万円の住宅改修の工事の場合、改修工事終了後、ご高齢の方(1割負担)は施工業者に、20万円全額を支払います。
ご高齢の方(あるいはケアマネジャー)は施工完了後、行政に申請することで、残りの18万円を行政からもらうことができます。
行政に届出を出しているのといないのでは、支払いの流れがずいぶん違うんだね。
そもそもこの届出のことを「受領委任払取扱事業者登録」(知らなくて大丈夫です)というんだよ。
この登録にあたっては、介護保険の住宅改修についての講習会の参加が必要だから、登録建築業者は、住宅改修の流れも知っていると思ってもらってもいいね。
行政に届け出を出していない建築業者が、「住宅改修できますよ」と言って、住宅改修工事をだけを行い、介護保険の住宅改修のサービス対象に入らず、トラブルになるケースもあるから本当に注意が必要です。
未届けの業者が行う住宅改修は、ただのリフォーム工事です
届出を出していない業者でも、住宅改修工事を請け負うことは可能です。
しかし、介護保険の住宅改修の給付を受けるためには、受給のための流れに従う必要があります。
工事業者には
- 届出をしているか
- 介護保険の住宅改修の流れを知っているか
この2点は必ず確認しましょう。
この2点は本当に確認してください。給付を受けられないと、そのまま10割負担のお支払いになります。
参考までに、住宅改修の流れの第一手目は、現場視察のあと、市町村役場へ相談に行くことです。それを知らない業者さんは、介護保険の住宅改修を知らない業者さんです。
住宅改修を知らない業者さんは、ケアマネジャーさんに流れを聞いてみたほうがいいね。
介護向けリフォームのよくある誤解
【最大の誤解】介護向けリフォーム=車いす向けリフォームではありません
介護向けといっても、今ある家を、どうやって車いすで生活できる家にするの?
今のサニーの質問は、結構多くの人も思っていることで、「介護向け住宅リフォーム=車いす向けのリフォーム」と勘違いしている人がとても多いんだ。
それって違うの?
バリアフリー、広い間口に広いトイレとか、普通に考えると思うけどね。
誤解を解くカギは「車いすの生活」にあります。
人が、二足歩行で歩いていて、徐々に足腰が衰えていくと、杖を使うようになり、さらに衰えると歩行器を使うようになり、さらにさらに衰えれば車いすを使うと思っていませんか?
今の例えは普通にそう思えるけどね…
歩くことと車いすを使うことはつながっていません
「歩く」生活と「車いす」の生活は、使っている部分が違います。
基本的に歩く生活であれば、どんなに衰えても、基本的に足を使って移動して生活していきます。
でも、車いすの生活では基本的に足は使わずに手を使って生活になります。
つまり、歩行の生活と車いすの生活は全く別物なのです。
ということは、歩く生活をしている人は、どんなに衰えても基本は歩く生活という考えなんだね。
…..φ(・ω・*)なるほど… そういわれてみればそうかもしれないね。
そうそう。だから、住宅改修をするときには、対象となるおじいちゃんおばあちゃんがどれくらい歩ける能力があるのかの把握が必要になるんだよ。
たしかに、やっと歩ける人に、車いす専用の広い間口や、広いトイレはかえって、負担になるかもしれないね。
でもね、どれくらい歩ける能力があるのかを素人がどう判断すればいいの?
ケアマネさんやリハビリ職の人に聞くといいよ。下のブログも参考にしてください↓
建築業者はしっかり選ぼう。
いろいろな建築業者の良い点とまあまあな点
一般の方々が、建築を知らないことをいいことに、本来不要なところにも、もっともらしい理由をつけて工事をしようとする建築業者が結構多いです(何度不要な工事を止めたことか…)。
以下に建築業者の良い点とまあまあな点をまとめてみました。
良い点とまあまあな点は、管理人福行のこれまでの経験や担当利用者・家族様の感想をもとにしています。
良い点
- 工事代金が安い
- 誰が工事してくれるのかが、分かるので安心。
- フットワークが軽く、早めに工事を始めてくれる。
まあまあな点
- 工事は何でもできそうに見えるが、実は不得意分野がある。
- 介護保険の住宅改修は分からないことが多い。
- 余計な工事、不必要な工事まで盛り込もうとする。
良い点
- 住宅改修の流れは熟知しており、ほとんどの業者が受領委任払いでの対応ができる。
- ケアマネジャーとの関係も良好なことが多い(話を進めやすい)
まあまあな点
- 「他より安いです」と言っていても、それは大手との比較で、小さい工務店よりは高め。
- 施工部門が忙しいことが多く、思ったよりも着工が遅い。
良い点
- 住宅改修の流れは熟知しており、ほとんどの業者が受領委任払いでの対応ができる。
- 施工部門も充実しており、ネームバリューがあり、仕事のクオリティも高い。
まあまあな点
- 規模が大きい企業のため、費用は割高になる。
- 大規模な改修工事と抱き合わせようとする。
そうは言っても…
急にいろいろ比較を出されても、実際に業者さんを識別するのは難しいよ。
住宅工事に関しては、業者さんのほうが一枚上手だからね。
その時にはどうすればいいの?
建築業者さんを選ぶ基本は、
必ず複数の建築業者から見積もりをとる
ことにつきます。
これは、厚生労働省からの通知にも記載されているんだよ。
参考資料:厚生労働省 「介護保険最新情報 Vol.664」
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その際に大事なことは
- 建築業者さんの意見に流されない。
- 建築業者さんとケアマネジャーさん仲良く進めようとしても、ご家族様が納得できなければ、進めない勇気を持つ。
そのためにも、ご家族さんで待ったをかけられるように、介護向けリフォームのポイントをこの後お伝えしますね。
介護向けリフォーム(住宅改修)のポイント
介護向けリフォームのポイント①:身体がどれくらい動けるか把握します
まずは、手すりなどモノの設置ありきではなく、まずは「動き」の把握が大切です。
介護向けリフォームや住宅改修では手すりやバリアフリーのことばかりにフォーカスされがちだけど、まずは、対象となるご高齢の方の
- どれくらい動くことができて
- 今後どれくらいさらに動けるかを把握して
- どれくらい動けないと在宅で生活が送れないか
を検討する必要があります。
「動き」を細かく観るんだね。
ヘルパーさんの回でも出てきたね。
介護向けリフォームや住宅改修が必要な場面のほとんどは、
- 病院からの退院
- 老人保健施設の退所
これらが決定したときに、在宅に戻る際の準備段階で行われることが多いです。
この場合は、リハビリ職の人がいるから、動きの把握や、今後どれくらい動けるかなどの意見をもらえます。
病院や施設によっては自宅を訪問してくれて、家の中の様子も見てくれます。
そのときに、先ほどの
- どれくらい動くことができて
- 今後どれくらいさらに動けるかを把握して
- どれくらい動けないと在宅で生活が送れないか
この3つの質問をしてみてください。
ご高齢の方の
- 今できる動き
- これまでの生活動線
を確認した後、
- 退院後はどの部屋で過ごすか
- どのような生活動線
を検討します。
入院前までのお部屋ではだめなの?
介護向けリフォームのポイント②:お部屋替えやお部屋の模様替えを工夫する
同じ部屋、同じ動きで生活することができれば、それが理想ではあります。
しかし、それが難しいから介護向けリフォーム(住宅改修)の話が出るくるわけです。
例えば、部屋を変える理由は、
- トイレの近くの部屋にする
- リビングの近くにする
などがあります。
動線を変える理由は、歩く際に伝うものは、手すりばかりではなく、家にある家具とかで代用してもかまいません。
動線を考えて、家具は配置し直す必要はありますが、お金をかけずに家のもので何とかなるなら、そのほうがいいですよね。
でも、それで済むなら、介護向けリフォームや住宅改修っていらないんじゃないの?
介護向けリフォームのポイント③:「必要なものを必要なところに」だけでいいんです
その通り。
基本的にはやらなくてよいものはやらなくていいと思うよ。
この場所にどうしても必要だねっていうところにだけ、手すりをつけるっていう考えで十分だよ。
それなら、素人の目から見ても納得だね。
その素人が見ても「納得」がとても大事です。
建築業者が言ったとか、ケアマネジャーが言ったことをうのみにしてはいけません。
意見に流されやすいご家族様やご高齢の方は、「プロが言っているんだから間違いない」思うかもしれませんが、がちゃんと納得できないものはやらないほうが無難です(やらない限りはお金もかかりません)。
この工事は本当に必要だと思うものだけを行うようにしてください。
大事なのでここでもう一度おさらいします。
動きを観る
生活動線を考える
必要に応じた家具の配置などの「模様替え」を行う
本当に必要なところだけを工事する
この手順で、無駄なく工事をしましょう。
介護向けリフォームのポイント④:ある程度のバリアは必要な場合も
例えば、つまづいて転ぶと危険だから、家の中の引き戸の敷居につまずき防止の小さなスロープを取り付けたいとよく聞ききますが、これもおすすめできません。
え、だって、敷居につまづいたら、ぶつけた足も痛いうえに転んだら大変じゃないか。
長年住んでいた家で、敷居につまづいて転ぶことってあると思う?
たぶんないと思うよ。
そこには小さな段差があるとわかっていて、身体も覚えているから、つまづかないものだよ。
むしろ小さなスロープを取り付けることで、つまづく原因になる可能性が出てきます
もしも、長年住んでいて、つまづいたことがあるなら、つまづいた敷居に関して設置はいいと思ますが、全部の敷居には必要ないでしょう。
介護向けリフォームの代表格のひとつであるバリアフリーですが、何でもかんでも「バリアフリー」が良いとは限らないのです。
介護向けリフォーム=バリアフリーばかり考えてしまうけど、ある程度のバリアはあってもおじいちゃんおばあちゃんにとってはバリアに感じていないということだね。
そうそう。逆にバリアフリーにしてしまうと、床の感覚が変わって、つまづいてしまったり滑ってしまうこともあるね。
介護向けリフォームのポイント~住宅改修を利用するコツ~:今日のまとめ
介護保険の住宅改修とはどういうものか
- 介護保険の認定を受けた人が自宅で安全に暮らすための改修工事を最大20万円分(税込み)を1割負担で受けることができます。
住宅改修は車椅子向けのリフォームだけ…?
- 住宅改修=車いすの生活向けリフォームのことではありません。おじいちゃんおばあちゃんの生活に合わせてできない動きを補うための工事となります。
建築業者さんに任せきりするのは…
- 建築業者さんの中には介護保険の住宅改修のことを分かっていない人もいるので注意。
住宅改修のポイント
- おじいちゃんおばあちゃんのできない動きを補うための必要な部分だけを工事にしましょう。
なんでもかんでも住宅改修すればいいものではない?
- ある程度のバリアは必要な場合があります。
本日のポイントを参考にしてみてください。次回もお楽しみに。
皆さんのココロが晴れやかになりますように。
20万円支給って、税込みで20万円なの?税抜きで20万円なの?