目次
はじめに
“まだ大丈夫”に潜む危険!家族を守るための介護サービス活用術
現役のケアマネジャーとして、日々ご家族様と向き合う中で、このような言葉を聞きます。
「家での介護は大変だけれど、今のままで何とかやれるかも」
頑張ってる人はもちろん応援したいけれど、もし支えてる人が一人だけだったら、その人が倒れたら本当に大変なことになるんだよ。
そのため、適度に介護保険サービスを使うことが上手に在宅介護を続けていくコツのひとつと言えます。
そのことを伝えても、「私ひとりで大丈夫」と頑なに サービスを拒む方も中にはいます。
そのがんばりは応援したいのですが、長年の経験から、そのご家族様が介護ができない状況になってしまい、周りの家族や親戚に突然介護をお願いすることになった方々も少なからず観てきました。
今回は、介護サービスを利用しない理由に隠された心理的な要因をひも解いていきます。
在宅介護をがんばるあなたが心に余裕を持ち、より良い介護ができるように、そのヒントをお届けします。
この記事は、主任介護支援専門員の資格を持つ現役ケアマネジャーが執筆しています。在宅介護でお悩みの方に信頼できる情報をお届けすることを目的としています。
多くの人が「まだ大丈夫」と思う理由は?
厚生労働省の「在宅介護実態調査」によれば、介護保険サービスを利用しない理由として、次のような声が挙がっています。
- 「まだ必要ないと思う」46.7%
- そう思っているのはご家族様だけで、周りから見れば、必要だと思う状況があります。また、現状を変えるのが不安で、タイミングを見計らいすぎてしまう方が多いようです。
- 「使いたいサービスが近くにない」20.0%
- 実際には近くにあっても、情報が不足していて知られていない場合もあります。
- 「本人がサービスを希望していない」13.3%
- 高齢の方自身が「大丈夫」と思い込んでいるケースが少なくありません。しかし 本当に大丈夫なのであれば そもそも 介護が必要な状況になっていません。
「まだ平気」
「もっと後でもいい」
と思いがちです。
ですが、負担が積み重なる前に手を打つことが、長く介護を続けるための鍵です。
でも、使うのがおっくうな気持ちもあるかもしれませんね。
「負担を感じているのにサービスを使わない」理由とは?
一方で、同じ調査では次のような結果も報告されています。
- 介護者の68%が「ほぼ毎日」介護を行っている
→ 毎日の介護は、体力的にも精神的にも大きな負担になり得ます。それが感じられなくなり、上記にあったまだ必要ないと思うという状況は、体力的にも気持ち的にも長くは続きません。 - 34%が「認知症への対応」に不安を感じている
→ 特に認知症ケアでは、どのように対応すべきか迷う方が多いのが現状です。家族という関係が近すぎるため、教科書にあるような冷静な対応が、すでにできない状況も経験上多く見受けられます。
一方では「負担を感じている」、他方では「まだサービスは必要ない」と感じている。この矛盾はなぜ起こるのでしょうか?
この矛盾が生まれる理由
- 「なんとかなる」という心理
- 自分でやれるうちは、サービスを頼む必要がないと思ってしまいがちです。特に、これまで大きな問題がなかった場合は、変化を求める必要性を感じにくいのかもしれません。大丈夫だと思っているのは介護を頑張るご家族本人だけのことが大変多いです。
- 「サービスを使うのは特別な状況」という思い込み
- サービスは「重い病気や認知症が進行した場合だけ必要」と考える方が多いようです。実際は それが「今」なんですけどね…
結果として、多くの人が「負担を感じながらもサービスを使わない」という状況に陥っているのです。
まだ、自分はがんばることができる!
まだ、自分は大丈夫!
この前向きな気持ちが苦しくさせる原因になるなんてね・・・
介護の多くは、衰えていく方向に向かうから、どんなに頑張ってもなかなか報われず、それは自分ががんばってないからとますます追い込んじゃう人もいるみたいだね・・・
つい頑張りすぎてしまう心理に気づこう
介護サービスを使わない理由の背景には、「考え方のクセ」が隠れていることがあります。
このクセに気づくことで、これまでとは違った選択肢が見えてくるかもしれません。
1. 変化が怖いと感じる
「今の生活を変えたくない」「サービスを使い、知らない人が家に来るのは抵抗がある」「世間体もある」という気持ちは自然なことです。
でも、その変化が自分や家族にどんな良い影響をもたらすか、考えてみませんか?
例えば:
訪問介護(ホームヘルパー)を試したAさんのご家族様。
「最初は抵抗があったけれど、掃除を頼んでみたら心に余裕ができた。またおばあさんにも良い話し相手ができた」と話しています。
ご家族様もホームヘルパーから知らなかった情報を聞くこともできました。
2. 自分がやらなければならないと思い込む
「家族だから、自分がすべてやるべき」と感じてしまう方は少なくありません。
でも、負担が重すぎると笑顔で介護を続けることが難しくなります。
例えば:
配食サービスを使ったBさんのご家族様。
「食事作りの負担が減ったおかげで、常に買い物やご飯作りで心配することがなくなり、親と話す時間が増えました。また配食サービスは見守りサービスも兼ねていることもわかり使って良かったです」
という感想を聞かせていただきました。
3. サービスの利用が「甘え」だと感じてしまう
「介護サービスを利用するのは、責任を放棄しているように感じる」と思う方もいます。
でも、サービスの利用はむしろ介護をより良い形で続けるための工夫です。
例えば:
デイサービスを利用したCさんのご家族様。
「デイサービスで親が楽しそうに過ごしているのを見て、自分も罪悪感が薄れてホッとしました。私にもその間の自由な時間が確保できました。」と語っています。
よくある質問:介護サービスの利用について
Q1: 介護サービスってどこに相談すればいいの?
A: 地域包括支援センターがおすすめです。自治体、自治体に委託された法人が運営しており、介護に関する無料の相談窓口として利用できます。
ケアマネジャーの紹介や、あなたの状況に合ったサービスの提案もしてくれます。
地域包括支援センターがわからない時には、お近くの施設やデイサービスに直接問い合わせてみてください。
Q2: サービスを利用したらお金がかかりそうで心配です。
A: 介護保険を利用すれば、多くのサービスが1割~3割負担で利用できます。例えば、訪問介護なら掃除や調理を1時間程度依頼しても、数百円から数千円程度です。
例えば訪問介護なら、こちらのブログをご覧になってください↓
介護のお金 そのものは 思ったほどかからないんだよね。
Q3: デイサービスってどんなことをするの?
A: デイサービスでは、機能訓練やレクリエーション、食事提供などを受けられます。
他の利用者との交流が刺激となり、生活に変化をもたらすことも期待できます。
要介護者にとって気分転換の場としても役立ちます。
デイサービスは本当にいろんな種類があるから、こちらのブログを参考に探してみるといいよ↓
Q4: ショートステイはどういうときに使えばいいの?
A: ショートステイ(短期入所生活介護)は、要介護者が短期間施設に泊まり、介護を受けられるサービスです。
介護者が疲れたときや、旅行や仕事で一時的に介護ができないときに利用するのが一般的です。
利用者は生活のリズムを維持し、機能訓練やレクリエーションにも参加できます。ケアマネジャーを通じて予約可能です。
お泊りのサービスだと少し高い印象がありますけれど、実際 どれぐらいになる かこちらのブログを参考にしてください↓
Q5: 認知症の親が「必要ない」と言い張っていて困っています。どうすればいいですか?
A: 無理に説得しようとするのではなく
という軽い提案がおすすめです。
また、デイサービスやショートステイを体験すると、意外と「楽しかった」と感じてもらえることがあります。
ケアマネさんにそのまま相談してみてください。
あの手この手で利用につなげてくれると思います。
Q6: 自分が疲れすぎてしまっているけど、他の家族に頼るのは気が引けます…。
A: 介護者が疲れ果ててしまうと、最終的に介護が続けられなくなることもあります。
自分が気持ち的にも身体的にも健康でいられることが、介護を続けるための大切なポイントです。
他の家族に頼るのは「甘え」ではなく、「家族全員の幸せを守るための工夫」と考えてみてください。
おわりに
介護で後悔しないための3つのヒント
少しだけ周りの力を借りることで、あなたの心に余裕が生まれ、家族の時間がもっと素敵なものになります。
小さな変化を恐れず、一歩を踏み出す
- 変化を受け入れることが介護の負担を軽減する鍵です。「試しに1回だけ」と軽い気持ちでサービスを利用してみましょう。
自分一人で抱え込まない
- 家族や介護サービスに頼ることで、心身の負担を減らせます。例えば、配食サービスや訪問介護で時間や体力をセーブする工夫が大切です。
プロの相談を活用する
- 地域包括支援センターやケアマネジャーに相談して、自分や家族に合ったサポートを見つけることが重要です。
この記事を読んだ今日から、小さな一歩を始めてみませんか?
あなたのその一歩が、きっと優しさと安らぎの未来に変えるはずです。
今回のブログは「私はまだ大丈夫」と思っている人に向けての内容だよね。
自分が大丈夫だと思っているのだから、介護について検索する事って、そもそもないんじゃないの?
おっしゃる通りですね…
話の途中でも出てきたけど、大丈夫だと思っているのは本人だけで、周りから見れば、どう見ても危ないなっていう方はいるもんだよ。
その周りの方が このブログを見つけてくれればいいね。
そうだね。
少しでも参考になったら嬉しいです。
介護をがんばる皆様のココロが晴れやかになりますように。
自分の身体は何とかなってるし、自分が頑張ってるから、おじいちゃんおばあちゃんが家にいられるんだ、と思えばやりがいもあるよね。