「家族が認知症になった時の接し方・介護・頼れるサービス」を読んでみた

はじめに

「家族が認知症に。そんな時、あなたはどうしますか?」

認知症になった家族の介護は、体力、気力、そして経済的な負担を伴います。

最初は「大切な家族のため」と強い意志を持って始めた介護も、時間が経つにつれて、その重さに気づきます。

この本は、そんな介護者たちに向けて、少しでも負担を軽減し、笑顔でいられる日々を送るためのヒントを紹介しています。

認知症に対する誤解を解き、認知症の家族との正しい向き合い方、接し方を学びます。マンガ、イラスト、図や表を交えながら、認知症の基本から、日々の介護の悩みを解決するための具体的なアドバイスまで、幅広く紹介しています。

一人で抱え込まず、家族や専門家、そして利用できるサービスに頼ることの大切さも解説しています。

介護保険やデイケア、ホームヘルパーなど、知っておくべきサービスや制度についても解説しており、認知症の家族を持つ人に役立つ内容となっています。

サブレ

こちらの書籍は、2024年2月に出版された新しい本です。

本の評価:星評価

内容の豊富さ:★★★★★

この本は、介護保険の基本的な流れから、利用できるサービス(お金の管理、訪問診療も含まれる)認知症への対応まで、非常に幅広いトピックをカバーしています。

一冊あれば、まるで家庭の医学のように安心できるほどの情報が含まれており、その豊富さは非常に価値があると言えます。

加えて、マンガを交えることで読みやすさに配慮されている点も見逃せません。しかし、マンガの分かりやすさとテキストの説明との間にギャップがあり、特に説明文では専門用語が散りばめられているため、平易だとは言い難い状況です。

専門用語が含まれ、少し読みにくい文章でありますが、「内容の豊富さ」としての評価は「★★★★★:満足」です。

情報の量と質は高いものの、その情報が全ての読者にとって平易に伝わるわけではありません。読者が専門用語を理解し、内容を深く掘り下げるためには、ある程度の前知識が必要になるかもしれません。

しかしながら、この本が提供する情報の範囲と深さは評価に値します。

サニーデイ

タイトルに負けないくらい、たくさんの内容があったね!

実用性:★★☆☆☆

本書の後半部では、認知症の方への対応について細かく記述されています。

特に、認知症のさまざまな症状に対する対応方法が参考になると感じられます。

サブレ

29個の状況に対する対応例は助かりますね。

これらの情報は、認知症の在宅介護を行う方々にとって対応の基本となるでしょう。

しかし、本に記載されている対応方法の多くは、多くの介護者が実践しているすでに知られている内容です。

そのため、新たな洞察や解決策を求めている読者には、期待に応えることができない可能性があります。特に、既に試して効果がなかった対策に対して、どのように対応すればよいのかについての具体的なアドバイスが不足しているようです。

読者は、より進んだ問題解決のための具体的な指南を求めており、この点で本書は役立つ情報を提供しているとは言い難い状況です。

読みやすさ:★★★☆☆

この本は、見開きの2ページで一つの項目を扱う構成を取っており、各セクションの内容が簡潔にまとめられています。

サニーデイ

ぱっと開いて見れるのはいいよね。

特に第2章以降、マンガが登場しなくなるものの、表やイラストを巧みに用いることで視覚的にも理解しやすい工夫が施されています。

このような構成は、読みやすさを高める一方で、各項目に対する深い掘り下げがなされていないため、詳細な情報を求める読者にとっては物足りなさを感じる可能性があります。

見開き2ページという限られたスペース内で情報を伝えるというアプローチは、情報の取り入れやすさを促進するものの、その内容の深さには限界があるという点で、強みでありながらも弱点となっています。

読者がさらに詳細な情報や深い理解を求めている場合、この構成のために満足を得られないかもしれません。

気持ちへの影響:★★☆☆☆

タイトルに惹かれて手に取る読者は、内容に対してある程度の期待を持っているでしょう。しかし、実際にはその期待を完全に満たすには至らない内容となっています。

サブレ

ですが、認知症介護のことが多岐にわたって書かれているのは素晴らしいです。

この本は、万が一の状況に備えて家庭に置いておくタイプの参考書としては適していますが、読んでいて特別なひらめきを受けることは少ないでしょう。

読者が求める深い知識や具体的な解決策を提供するには及ばず、その結果、読後に感じる満足感や充実感にも影響を与える可能性があります。

この本は、特定の状況に対処するための基本的なガイドとしては役立つかもしれませんが、読むことで新たな視点を得たり、深い理解を促進したりすることは難しいと考えます。

総合評価:★★★☆☆

専門職の私も興味を引かれるタイトルにも関わらず、内容にはやや物足りなさを感じました。

一つの項目を見開き2ページで簡潔にまとめる構成は、介護保険の流れや認知症の特徴、サービスの利用方法など、多岐にわたる情報を網羅しており、その点では高く評価できます。

しかし、提供される情報の大部分がWeb検索や行政のパンフレットで容易に得られる内容であり、在宅介護で直面する具体的な問題解決のための情報は不足しているようです。

読者が最も必要とするのは、困難な状況を乗り越えるための実用的なアドバイスであり、この点で本書は期待を満たしていません。

サニーデイ

ちょっと評価が厳しくない?

だって、それを満たす本なんて出るのかな・・・?

また、特定の情報についてはさらに詳しい説明が欲しい場面もありましたが、2ページの制約と文字数制限のため仕方がないとはいえ、情報がしっかり記されていると、本書に対してより高い評価をすることになるでしょう。

この本は、認知症の特徴をおさえ、基本的な対処法を知りたい介護の経験が少ない介護職員や、初心者のケアマネジャーに最も役立つと思われます。

在宅介護において、家族が認知症になることへの備えとしては、必ずしも本書が最適とは言えず、Web検索など他の手段がより実用的かもしれません。

友人や家族が購入を検討している場合、スマホでの検索が難しいと感じる場合に限り、購入を勧めるかもしれません。

総合評価としての星評価は、「3星:普通」とします。

本書は一部の読者には役立つ情報を提供しているものの、在宅介護で直面する具体的な課題に対する解決策は欠けており、また、容易に入手可能な情報を中心に扱っているためです。


専門職向けとしてはある程度の価値がありますが、より実践的なガイドを求める読者には物足りない可能性があります。

おわりに

書評をお読みいただき、ありがとうございました。いかがでしたでしょうか?

今回の本は、分かりにくい介護保険制度に関して、幅広く情報をまとめ、見開き2ページごとに1項目を凝縮して1冊の本に仕上げる試みは、非常に評価できる点です。

しかし、今回の本の情報を求める読者層は必ずしも広くはないのが現実かもしれません。

サニーデイ

たしかに、将来の認知症介護の備えという意味では想像しにくいかもね。

かいごのよみもの編では今後も様々な書籍の書評を書いていく予定です。

もし、特定の本を福行さんにレビューしてほしいと考えているならば、遠慮なくメールフォームからご連絡ください。

サブレ

お待ちしてます。

サニーデイ

在宅介護をがんばる皆さまのココロが晴れやかになりますように!

ABOUT US
福行(主任ケアマネジャー)
介護業界29年目の現役のケアマネジャーです。 介護福祉士を20年、ケアマネジャーは9年目です。
これまでのケアマネジャーの経験から、ビジネスケアラーとして遠距離介護や在宅介護を頑張る皆さま、介護保険サービスの使い方や将来の介護に不安を感じる方にブログを書いています。
ブログの内容は、担当するご家族様から頂くたくさんの質問のなかで、特によく聞かれる質問をもとに、介護保険制度やサービスの使い方について分かりやすく解説しています。