住所が別の市区町村のときのあれこれ

はじめに

「これから親を引き取ろうと思うのですが、住民票を移していません。どうすればよいのでしょうか?」

「別に住む親が入院して、退院後に介護保険を利用してくださいと急に言われました。どうすればよいのでしょうか?」

同じ市区町村であれば、役所に足を運んで相談もできます。

しかし、他の地域に住んでいる場合は途端に、ややこしさを感じてしまいますよね。

今回は、別の住所地のご家族様が、介護保険をご利用されるときに出てくる疑問にお答えしていきたいと思います。

このブログをお読みいただくことで、住所の違うご家族様でも安心て介護保険が使えるようになるでしょう。

コロン

お急ぎの方は、上の目次から「今日のまとめ」へ飛んでご覧ください。

同じ市区町村にいない親の介護認定はどうするの?

突然介護保険を受けてと言われても…

ご高齢の方が、旅行中やご親戚のうちにお邪魔しているときでも、具合が悪くなることがあります。入院してしまうこともあるでしょう。

病院から呼ばれ、担当の先生から「介護保険のサービスを使った方がいい」と突然のお話し。

驚く間もなく、相談員から「介護保険は受けていますか?まだなら急いで受けてください」と言われました。

サニーデイ

同居しているわけでもないし、そもそも住んでいる場所も違うので、もうお手上げだよ…。

まず確認することは

そのご高齢の方は、介護保険を受けているかどうか確認しましょう。(介護保険証を持っているかどうか)

介護保険証を持っている場合

介護保険証は市区町村によって「色」異なります。上の図と色が異なることがありますので注意して下さい。

三つ折りの保険証を開いて一番右側の面(右上に(三)と書いてあります)を確認します。

要介護の認定があれば、居宅介護支援事業所(ケアマネジャーの事業所)名があります。

要支援であれば地域包括支援センター名が書かれてあります。

事業所名が確認できたら、その名前を検索して、電話をかけます。そして、介護が必要な状況になったことをお話ししましょう。

介護保険証を持っていない場合

もし持っていない場合は、介護保険の申請を受けましょう。ご本人、ご家族様が直接市区町村役場へ行って申請ができます。あるいは、以下のところでも代行で申請してくれます。

  • お住いの地区の地域包括支援センター
  • 居宅介護支援事業所(ケアマネジャーがいる事業所)
コロン

この時点で、ケアマネジャーに代行申請をお願いするとしても、必ずしもそのケアマネジャーと契約前提ではありませんのでご心配なく。

なお主治医の先生は、現在入院中の先生にするほうが状況を詳しく書いてくれます。

認定調査はどうなるの?

市区町村が離れていると、調査員も旅費を使って来てくれるイメージかもしれませんね。

サニーデイ

はるばる来てくれそうで悪いような気がするよ…。

ですが、調査員は今ご高齢の方がいる市区町村の調査員が担当してくれます。

その調査員の調査内容をもとにご高齢の方の住所地の市区町村が介護認定審査をしてくれます。

コロン

現地の調査員さんが調査票を作成して、住所地の市区町村に送るので、同一住所地の調査に比べれば、タイムラグが発生します。

離れて暮らす親を呼び寄せ、近くの施設に入所させたい

サニーデイ

そんなことできるの?

離れて暮らす親を呼び寄せ、施設に入所してもらうには、簡単な手続きでは済まないのでは…とお考えの方も多いと思います。

実は、そんなに難しいことはありません。

施設には「地域密着型」と「広域型」の2種類あります。それぞれの場合をみていきましょう。

「地域密着型」施設の場合

サニーデイ

ところで、「地域密着型」ってなに?

コロン

高齢者が要介護状態になったりしても、可能な限り、住み慣れた自宅又は地域で生活を継続できるようにするため、支援を行うサービスです。

また、規模が小さいことも特徴のひとつです。

「地域密着型」サービスは、要介護の認定を受けている方で、原則として施設やサービス事業者と同じ市区町村に住んでいる方が対象となります。

その中で、施設サービスは以下のものがあります。

  • 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
  • 地域密着型特定施設入居者生活介護(行政から指定を受けた介護付き有料老人ホームなど)
  • 地域密着型介護老人福祉施設

これらの施設に入所する場合は、「その施設」に住所変更することで入所ができます。

「広域型」施設の場合

「広域型」は、施設のある市区町村以外の方も対象となります。

ところが、入所する際に住所変更をしても「住所地特例」という状態になります。

サニーデイ

また、謎の用語が出てきた…

住所地特例とは

介護保険制度においては、住所地の市区町村が実施する介護保険の被保険者となるのが原則です。しかし、以下の方については…

住所地特例対象施設 に入所又は入居し、その施設の所在地に住所を移した者

例外として、施設入所(居)前の住所地の市区町村(保険者)が実施する介護保険の被保険者になります。これを「住所地特例」と言います。

サニーデイ

φ(・ェ・o)~メモメモ「住所地特例対象施設」ってどこの施設のことなの?

コロン
  • 介護保険施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院)
  • 特定施設(有料老人ホーム、軽費老人ホーム、条件に該当するサービス付き高齢者向け住宅)、
  • 養護老人ホーム

などがあります。

このうち、「特別養護老人ホーム」、「介護老人保健施設」は以前のブログでもお話ししてますので、詳しくはこちらからどうぞ↓

サニーデイ

((φ(・д・。)ホォホォ これってさ、誰にメリットがあるの?

保険者を変更せずに対応することで、保険者間の財政的な不均衡の是正を図る措置がとられているのだから、保険者(市区町村)にだけメリットがあります。

サニーデイ

╮(•́ω•̀๑)╭ヤレヤレ

住所地特例は解除できるの?

サニーデイ

確かに、何の手続きをするにしても、いちいち前の市区町村に届けで出すのは面倒だね。

ところで、この住所地特例を解除する方法はないの?

「住所地特例」は…

  • その(入所する)施設がある住所地以外の市区町村に住民票がある
  • その方が施設に入所するときに、住民票をその施設に移す

この条件で発動されます(一応申請するのですが…)。

コロン

つまり、住民票をその施設に移さず、(施設のある市区町村の中だけど)他の住所に移せばよいのです。

サニーデイ

例えば、その施設のある市区町村にご家族やご親戚がいれば、そこに住所を移すイメージだね。

この方法のメリットとデメリットはあるの?

では、メリットとデメリットを観ていきましょう。

メリット
  • 住所地特例は適用されず、住民票を移した市区町村が保険者となる。
  • 介護保険の手続きが、お住いの市区町村役所でできる。
デメリット
  • 行政の郵便は、ご家族(親戚)の家に配達されてしまう。
  • お住いの市町村の介護保険料をお支払いすることになる(高くなった場合を想定。もし安くなればメリットにもなる)
サニーデイ

でも、これじゃあさ、ご家族の住所から施設には移すことができないということになるの?

コロン

実は行政には「3か月ルール」があります。

3か月間、施設以外の場所に住所があった場合に、(その3か月後)施設へ住所を移しても、そのまま住所地特例にはならないんだよ。

住所地特例解除のまとめ

では最後に、市区町村の異なる、ご高齢の方を引き取るご家族がいる地域の施設に入所してもらう場合、「住所地特例」が発生します。

これまでのことから、この解除の方法は2つでしたね。

地域密着型施設に入所する

STEP

「地域密着型」施設に入所する。

STEP

住所をその施設に変更する。

STEP

完了

サニーデイ

これは、かんたんだね。

お住いの市町村によって地域密着型サービスの考え方の違いで、この方法が利用できない市町村もありますので注意して下さい。

3か月ルールを使う(市区町村によってルールが異なる)

例として、住所地特例が発動してしまう施設に入所する場合

STEP

住所地をその施設のある市区町村のどこか(ご家族や親せきの家など)に移す。

STEP

3か月後、施設に住所を移す

STEP

完了

サニーデイ

ルールが異なるってどういうこと?

コロン

市区町村によって、3か月待たなくても、住所をご家族様や、ご親戚の家に移した時点で、住所地特例を回避することができるところもあるんだよ。

その市町村の地域密着型サービスの考え方によりますので、お住いの市町村に問い合わせてみましょう。

前住所で認定された介護度はどうなるの?

サニーデイ

それは当然持ち越しでしょ…?

ところが、要介護、要支援認定を受けたご高齢の方が、住所地を他の市区町村に移動した場合は、転入した市区町村にて「改めて介護認定」受けていただく必要があります。

サニーデイ

〣( ºΔº )〣ガーン そうなの…メンドクサソウ…

ですが、転入してから14日以内に要介護認定等を証明する書類(受給者資格証明書)を添えて要介護認定等を申請した場合、そのまま同じ介護認定を維持できます。

コロン

お引っ越しの際は

  • 転出届+受給資格証明書をもらう
  • 転入届+受給者資格証明書を提出(14日以内)

これらをお忘れなく。

きょうのまとめ

他の市区町村で認定を受ける場合は

  • まずは介護保険証があるかどうか確認しましょう(介護認定を受けているかどうか)
  • 介護保険証ありの場合。ご担当されているケアマネジャーの事業所(居宅介護支援事業所)に連絡しましょう
  • もし、お持ちでないのなら、その高齢の方のお住いの地域包括支援センターに相談しましょう。

介護認定調査はどうなるの?

介護認定調査は、いま滞在している(入院している)市区町村の調査員さんが委託されて調査をします。

つまり、調査員さんに旅費をお支払いするようなことはありません。

離れて暮らす親を呼びたいときは…

ご自宅で介護したい場合は

同じ介護度を維持したい場合、転入してから14日以内に要介護認定等を証明する書類(受給者資格証明書)を添えて要介護認定等を申請しましょう。

施設に預けたい場合は

地域密着型の場合は

そのまま申し込み、入所できたら住所を施設に移します。

ただし、この方法ができない市町村もあるので注意して下さい。

広域型の場合は

「住所地特例」が発動しますので、住所変更しても保険者は前住所地ままです。

ご本人には何も影響はありませんが、書類の手続きに郵送などの手間はかかります。

住所地特例を解除する方法は
  • 地域密着型施設に入所し、住所地をその施設に移す

ただし、この方法ができない市町村もあるので注意して下さい。

  • ご家族やご親戚の住所に一度移り、3か月後に施設に移す。

いかがでしたでしょうか?

今回は、遠距離介護に関する「移動」についての疑問を集めてみました。このブログが参考になれま嬉しいです。

なお、今回の話に出てきた内容は以下のブログも頂くと一層理解が深まるでしょう。

サニーデイ

皆様のココロが晴れやかになりますように。

ABOUT US
福行(主任ケアマネジャー)
介護業界28年目の現役のケアマネジャーです。 介護福祉士を20年、ケアマネジャーは8年目です。
これまでのケアマネジャーの経験から、ビジネスケアラーとして遠距離介護や在宅介護を頑張る皆さま、介護保険サービスの使い方や将来の介護に不安を感じる方にブログを書いています。
ブログの内容は、担当するご家族様から頂くたくさんの質問のなかで、特によく聞かれる質問をもとに、介護保険制度やサービスの使い方について分かりやすく解説しています。