はじめに 介護が終わったあと、心がついていかないあなたへ

自由になるはずだった。
大変な日々だった。ようやく抜け出せたのに、身体は重い。
できれば、もう少しゆっくりしたい。
突然始まった介護、
その介護もまた突然終わった。
望んでいた自分だけの自由な日々のはずなのに、
心は晴れず、身体も動かない。

夜にふと目が覚める。
いつも起きて、様子を確認した時間。
もうその必要はなくなった。ゆっくり休める――はずなのに。
朝、いつもより早く目が覚める。
でも、もうこの時間に起きなくてもいいんだ。

買い物で食品を手に取り、
「これは食べやすいかな」
と考えるクセが出てしまう。
ゆっくり休み、好きなものを食べて、ただ過ぎていく一日・・・
身体は楽になったけど、どこか寂しく、
介護した日々が懐かしく、ときに涙がこぼれる。
もし、そのようにお感じであれば、今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
この記事は、これまでケアマネジャーとして多くの利用者様やご家族とかかわり、そして介護を終えた後にお会いした方々との対話を通して、私自身が感じ、考えたことをまとめたものです。
悲しみは悲しみのままで
ふと気づくと、時が流れている。
あっという間に1週間、1ヶ月、そして季節が変わっていた。

私だけが取り残されているのか。
時の流れが早すぎるのか。
よくわからない。
写真に目がいく。懐かしい笑顔、懐かしい日々。

あのときは大変だったはずなのに、今は愛おしく思えてしまう。
自由を得たはずなのに、心は空っぽになってしまった。
写真を見ると涙がこぼれる。
名前を言っても涙があふれる。
そうか、たぶん私は悲しいんだ。

悲しみは、頑張った日々の積み重ねでもある。と思う・・・。
だから私は、もう少しこの悲しみに浸っていたい。
大変だったけど、あの時間も私の宝物だから。
立ち上がることより、大切なこと
周りのみんなは励ましてくれる。
「元気出してね」
「そろそろ笑顔を見せて」
気持ちは嬉しい。元気も出したい。

でも、悲しいんだよ。
ストア派の哲学者なら「感情に支配されるな」と言うかもしれない。
けれど、理性ではどうにもならない悲しみもある。
悲しみを手放したら、絆も消えてしまうのではないだろうか?
悲しくなくなったとき、それでも私は「私」でいられるのだろうか?
じゃあ、このまま心に蓋をしてみようか。
――でも、それでは息苦しすぎる。

多くの人が、そんな「蓋」をしながら生きているのかもしれない。
そのうち慣れるのかもしれない。
だけど、写真を見ても何も感じなくなったら、それは幸せなのだろうか。
悲しみを抱えたまま生きるのは、残酷で苦しい。
けれど、それでも「手放したくない気持ち」がある。
それを、人はきっと絆と呼ぶのだろう。
絆を胸に、今日を生きる
毎日は過ぎて、あっという間に半年が経った。
もう、あの日から半年も――?

相変わらず寂しさは残っている。
暖かい日ざしに、一緒に散歩をしたことを思い出す。
一緒に食べたおかずを作る。
喜んで食べてくれる人はひとり減っているけど・・・
ある日、介護に悩む同僚から相談を受けた。
「大丈夫。今は大変かもしれないけど、介護は必ず終わるから。」
と思わず口から出た。
同僚には届いたかどうか分からない。
けれど、驚いたのは、私がそう言えたことだった。

あの頃、私は介護に疲れ、悲しみに沈んでいた。
私もたくさん励まされたけれど、みんな人ごとだと思って耳を塞いでいた。
もしかしたら、励ましてくれた友人や同僚は、同じように悲しみを抱えていたのかもしれない。
誰かを励ましたいと思えるのは、自分も痛みを知っているからなんだ。
そう思うと、あのときの言葉ひとつひとつが胸にしみてくる。
私だけが、気づいていなかった。
人は悲しみを知るたびに、少しずつ優しくなっていく。
それを、介護を通して教えてもらった。

悲しいままでいいと思う。
自由になって得たもの――それは、きっと優しさかもしれない。
会えないけれど、いつでも会える。
そう思える自分を
私は嫌いじゃない。
おわりに この文章を読んでくださったあなたへ

最後に
「かいごのともしび」は、今回のお話をもって本編の最終回とさせていただきます。
これまで、ケアマネジャーとして学んできたことのほとんどを、このブログに書いてきました。
多くの記事は、在宅介護をがんばるご家族様からいただいた実際の質問をもとに構成しています。
だからこそ、読んでくださる方の現実に少しでも役立てたのではないか――そんな思いで続けてきました。
このような記事を書き続けることができたのも、
時に未熟だった私を信じ、支えてくださった利用者様やご家族のおかげです。
心から感謝申し上げます。
もし、どこか伝えきれなかったり、届ききらなかった部分があったとしたら、
それは私の文章力の拙さゆえだと思います。
これまで約3年、全48話にわたり書き続けてきた記事は、
今後も少しずつ見直しを重ね、より良い形へと整えていきたいと思っています。
もちろん、介護保険制度の最新改定にも準拠できるよう更新を続けます。
本編はいったんここで幕を下ろしますが、
また必要な情報や新しい気づきがあれば、少しずつ筆を取るつもりです。
もし「こんなテーマを書いてほしい」と思われる方は、
ブログの問い合わせ欄から、ぜひお声をお寄せください。
ここまで「かいごのともしび」を読んでくださったすべての皆様へ。
本当にありがとうございました。
管理人 福行・サニーデイ・コロン・サブレ










