はじめに
今回紹介する「認知症の人が見ている世界」は今までありそうでなかった工夫がある本です。
多くの認知症の書籍は、認知症の困った症状の背景を解説し、それに合わせた対応法を紹介するという流れのものが多いです。
ですので、各書籍ごとに、困った症状の解説の分かりやすさを競うような印象がありました。
ところが、この本では
- 漫画で一般の人が見ている認知症の方
- 認知症の方が見ている世界
この2つを対比した後に解説を加えるという方法をとっており、漫画の読みやすさとその後の解説が大変理解しやすく、対応のポイントも書かれているので大変読みやすい内容となっております。

同じ場面をそれぞれの視点で見せるのはわかりやすいですね。
この記事は、主任介護支援専門員の資格を持つ現役ケアマネジャーが執筆しています。在宅介護でお悩みの方に信頼できる情報をお届けすることを目的としています。
「認知症の人が見ている世界」はどんな本?
「認知症の人が見ている世界」は、第3作まであります。
どの巻も認知症の現象を多面的に捉え、一般の人々が認知症をどのように見ているかと、患者自身が体験している内面世界との違いを、見開き2ページの対比形式で表現しています。

でも、今回紹介するのは第1作目になります。

たしかに、この本だけ3冊分紹介したら、ちょっと不公平だもんね。
漫画による視覚的な描写と丁寧な文章解説が融合することで、認知症の複雑さやその背景にある心理的要因が直感的理解ができます。
また、対応のコツとして、介護現場も使える実践的なアプローチも示されています。
これにより、介護職員やその家族にとって、現場で役にたち、新たな視点が得られる一冊となっています。
内容の豊富さ:★★★★★
認知症の症状はたくさんありますが、この本は代表的な事例として、第1巻では26ケース、第2巻では28ケース、第3巻では22ケースの症状について解説をしております。さすがに3巻もあるので、内容は十分にあると言えるでしょう。
元々はシリーズ化する予定ではなかったと推測されますが、結果として3冊にわたる充実した内容となっており、特に第1巻の完成度は非常に高く、どの巻だけを取っても学びが得られる構成です。

第1巻だけでも、ボリュームは十分だね!
実用性:★★★★★
実際に、一般の方が見ている認知症の人の行動と、認知症の人が見ている世界を対比しているため、認知症の方の行動の理解がとてもよくできます。この困った症状にはどのような理由があったのかが一目瞭然です。
例えば、症状13では、危険なのに車の運転をやめてくれない問題に触れられており、認知症の人がどうして車に乗ることをやめようとしないのか、その理由も書かれています。

認知症の人の気持ちも漫画からわかるので、理解しやすいです。
認知症の方の行動が常に同じであるわけではありませんが、参考になる部分は多く、それに対する対応策も記されています。
ただ、本の通りの対応策で全てが解決するとは限りませんが、本に書かれている成功事例は参考にするには十分な内容だと思います。
読みやすさ:★★★★☆(4.5)
本のタイトルである「認知症の方が見ている世界」は、各ケースの冒頭の漫画で描かれているため、大変分かりやすいです。

同じ場面をそれぞれの視点で漫画にするのが斬新だね。
その後に文章の解説も加わるので、漫画で理解が得られやすい人や文章が理解できる人それぞれにメリットのある本だと思います。
第1巻は大変良い内容で、2巻はコロナ後の内容なのでこれもまた良い内容です。3巻は著者が提唱する「先回りケア」を用いた内容です。

たくさんの症例を扱っていても読みやすいためどんどん読めますね。
ただ、どの方もマンガが好きかどうかは別ですけど・・・
介護の現場で認知症の症状に悩まされている職員には、時間のない中でも読みやすく参考にしやすい本だと思います。
気持ちへの影響:★★★★★
冒頭の漫画で登場人物が表情豊かに描かれているため、家族や認知症の方の喜怒哀楽が容易に分かり、共感しやすい内容となっております。
例えば、症状8では、認知症の方が相手の話を理解できない理由が書かれています。
認知症の方が大変なのは、話を聞けばわかるけれど、実際に認知症の方も迷惑をかけないと頑張っているということがどのケースを見ても感じられます。

誰だって迷惑はかけたくないよね。認知症の方だってそうなんだね。
そのことが分かると、職員のケアに対する意識も変わってきます。
認知症側の方の気持ちを表現しているのはとても斬新で、参考になりました。
総合評価:★★★★☆(4.8)
全体的な印象としては、各項目は短めにまとめられており、初めに一般の人が見ている認知症の方と認知症の方が見ている世界の対比が漫画で描かれていて大変分かりやすいです。
その後、文字による説明も加えられ、対応のポイントも記されているため、全体的に理解しやすい内容となっています。

サニーはマンガがある方が理解が早く読みやすいので好みだね。

この辺りは好みが分かれるかと思います。
また、漫画のタッチに関しても好みが別れると思うので、この漫画のタッチに慣れてくれば、さほど違和感はないでしょう。
個人的な感想
この本に挙げられている症例は、介護の現場でよく見かけるもので、経験的に対応策については介護職員の間で既に知っている方が多いかもしれません。
例えば、ここに出てくる「もの取られ妄想」についての症例もその一つと言えるでしょう。
しかし、その方がどうしてその行動をとっているのかを深く理解している介護職員は、そう多くはないかもしれません。
この本は、認知症の方がどのような世界の見方をしているのかを教えてくれているので、その視点から見ると、確かにその方の行動も理解できるのではないかと思えました。
そのため、この本は経験を積んだ介護職員にとっても大変参考になる本だと感じました。
ターゲット読者
この本は、
- 今介護の現場で活躍している介護職員の方
- 認知症の対応に磨きをかけたいと思う介護職員
- どうしてそのような行動をしてしまうのか疑問に思う方々
上記3者には大変有効だと思います。
必ずしも本の内容通りに考えているわけではありませんが、考え方の一つとして大変参考になります。
推奨度
この本は、読みやすさや分かりやすさを考えても、認知症関連の書籍の中では強くおすすめできる一冊と言えます。
今回『かいごのともしび』でも色々な本を取り上げましたが、個人的にはこの本が一番おすすめです。

前回の書評からは一変した評価になったね。

もちろん好みはありますので、あくまでも福行さんの個人的な意見になります。
おわりに
本書は、認知症の方がどのような世界を見ているのかという視点から、その行動の背景や理由を丁寧に解説しており、介護現場で働く方々にとってたいへん役立つ一冊となっています。
漫画と文章の二重のアプローチにより、直感的な理解と詳細な説明が見事に融合され、専門的な知識がなくても理解しやすい構成になっている点は大きな魅力です。

また、各症例ごとに具体的な対応策が示されているため、実際の介護現場での応用がしやすいのも特徴です。

評価得点がどれも高く、この本は認知症ケアに関心を持つすべての人にとって参考になると感じるね。
これから介護の現場に携わる方や、認知症についてより深く理解したい方にぜひ手に取っていただきたい一冊です。
今後も、本を通して、介護の現場でのより良い認知症ケアの実現ができることを期待しております。
おまけ:本編とは全く関係ありません

というわけで、第3部「かいごのよみもの」編で紹介する本は以上となります。

Σ(゜Д゜;)
福行さん!
福行さんが登場する回は、毎回その章の最終回のときでした。サニーはそれを知っていて驚いています。

サニ〜、さぶぶ〜
ただいま〜。

ガ―Σ(゜Д゜;)―ン!!
コロンまで帰ってきた!

(๑’ᴗ’๑)おかえり〜
福行さん、コロン。
コロンは、第2部までナビゲーターをつとめていましたが、おやつタイムとお昼寝のため、第3部はサブレに任せていました。

全員登場している…
と、いうことは…
「かいごのともしび」はいよいよ最終回になってしまったの?
o(>_< *)(* >_<)oジタバタ まだ早いんじゃないの?
ここで「かいごのともしび」を消してしまってもいいの!

サニー、新しい章に入る前に、もう1話書こうと考えていたんだよ。

(;д;) もう1話…?
いろいろな認知症の本を紹介して、いろいろな症状も出尽くしたんじゃないの?

じつは、1つけっこう知られているのに、その対策が書かれていない症状があるんだよ。

そんな認知症の症状があるの?

次回は、冷蔵庫を荒らして際限なく食べてしまう、「過食」を取り上げようと思います。
次回は、認知症状の「過食」についてのお話です。
各種認知症状の本でも取り上げられない「過食」は対策が難しい症状です。

過食は実は結構ご家族様からも相談を受けることが多い症状の1つです。決定的な対策がないのですが、私の独自の視点で対応を書いていきます。

対策が難しいけど、頑張って書くんですね。

どこまで参考になるかわからないけど、相談が多いということは、対策がないなりに、お伝えしないといけないよね。

対策が難しいのに大丈夫なのかな…?
まあ、続くのわかって安心できたぞ(✗╹◡╹)ノ
介護をがんばる皆様のココロが晴れやかになりますように!
どの本も結構個性的だったけどね。
この本はどんな工夫があるの?